【第7回】退職の作法と心得 その2
現在の勤務先との退職交渉が一向に進まず、時間だけが過ぎていく。
そんな中、転職先企業からは「いつになったら入社出来るんですか?」とプッシュが。
苦労の末にやっと内定を得て、転職を決断したのに、
指定する入社日に間に合わず、内定取り消しになった、というケースがあります。
(企業はこのような場合は内定取り消しが出来るのです)
こんな状況を避けるために、退職交渉→退職→新天地へ、
のプロセスは出来る限りスムーズに、時間を掛けずにがベターです。
退職願が受理された後は、引継ぎスケジュールも含めて退職日の設定に移行します。
通常は1.0-2.0か月後に退職というケースが殆どでしょう。
この退職日交渉の際に大事なのは、以下のようなことです。
「現職は1.5か月後に退職、その後転職先へ入社」という設定で考えてみます。
この退職日交渉の際、「1.5か月後」ではなく「1か月後」に退職します、
と短めに退職希望日をまず提示するのです。
(その時の状況にもよりますが)
「1.5か月後」で切り出してしまうと、そこから企業側との交渉の中で
「1.5か月は急すぎる。それは無理」「2か月後であれば」という展開になる
可能性が高くなってしまいます。
上記のようにネゴされるのをあらかじめ想定し、
実際より早めの退職日を前提にして交渉を進めることにより
「では2週間延ばして、1.5か月後に退職ということで」
というプラン通りの着地を決めることが可能になります。
*価格交渉などの場においても、基本的には同じロジックです。
あと、これも結構多いケースなのですが
「退職を希望する場合は3か月以上前に申し入れ/通知すること」
という社内規定/就業規則がある場合です。
「今の会社の就業規則で、3か月後でないと退職出来ないと定められており、
1か月後の入社は無理です。3か月後でお願い出来ませんか?」
と転職先企業へ相談しても
「いやー、3か月は長過ぎるよ。遅くとも1.5か月後には入社頂かないと困る」
と返されるケースです。
(通常、3か月後の入社を容認する転職先企業は少数です)
このような際は、就業規則違反にはなりますが、
自分と現勤務先にとって合理的な1.0-1.5か月後の退職で交渉を進めるべきです。
民法上では退職通知から最短2週間後であれば退職/離職出来ることになっています。
この場合、企業の就業規則より民法が優先されますので、
「退職を希望する場合は3か月以上前に申し入れ/通知すること」
という就業規則を遵守する必要はありません。
また上記のような時に、
あなたは就業規則に違反したので、支払われるべき退職金/賃金は払いません、
ということを企業は出来ませんので、どうぞご安心を。
ですので、就業規則を盾にされても、
それを気にすることなく退職日交渉を進めたらいいのです。
それこそ
「就業規則があるから、3か月後以降でないと入社は無理です」と転職先に伝えた際
「では残念ではありますが、こちらの提示する入社日に入社出来ないということで、
今回の内定は取り消しとさせて頂きます」
となっても、転職先企業を訴える道理もありませんし、
転職出来なくなった損害を現勤務先企業が賠償する義務もありません。
出来る限り「飛ぶ鳥、後を濁さす」を実践していくのが大人のお作法、
と前回書きました。
しかしこのようなケースでは、
転職/入社を決めた、というあなたの決断と新天地へスムーズに移る事を
まず第一に優先して行動すべきだと、私は考えます。
このテーマについて書き続けると、まだまだ長くなってしまい、
退職交渉をしている貴方の時間を浪費してしまうかもしれませんので、
今回はこの辺りで。
このコラムを読んで頂いた皆様に、良いご縁がありますように。
人材アシスト株式会社
代表取締役 堀内 健輔